3 ムササビか天狗か

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 三人は、あわただしく夕飯を取ると、すぐさま夢魔退治の準備をすることになった。ゆずると弟が、勝負服、もとい、狩衣に着替え始める。  その間に、暇な直久には『べらんだー』を求めてコンビニに行け、という有無を言わさぬ命令が下ったのは致し方なかったかもしれない。  弟たちは狩衣に着替えたあと、ご先祖様の加護を得るために、祈りを捧げなくてはならないので、いざ出陣するまでには、しばし時間がかかるのだ。  狩衣とは、平安時代の貴族の普段着で、神社の神主さんを想像するとちょうどいい。二人は、破魔や除霊を行う時、この着物に着替える習慣がある。  とは言え、なんとかレンジャーやバッタのヒーローたちのように、狩衣姿に変身しないと力が発揮されない、というわけでもない。本人たちの気分らしいが、そのへんは破魔除霊の未経験者である直久には共感できない部分であった。 (ったく……行けばいいんだろう、行けば!)  一人、心の中でぼやきながら、直久は本家の門扉を引き開けた。ガラガラという音とともに、ひんやりとした外の空気が屋敷の中に入り込んでくる。 「さむっ……」  直久は、反射的に首をひっこめ、背中を丸めた。
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