プロローグ

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 喜びと安堵から、心が逸り、少女は思わず叫んだ。 「お兄さま――っ!!」  少女が手を伸ばし家門にその小さな指が触れる、まさにその時。  ――――ねえ。僕と遊ぼうよ。  何かが少女の肩にズシリとのしかかった。同時に、少女の心臓は跳ね上がり、全身を恐怖の波が襲う。  ゆっくりと少女は、自分の肩に視線を動かした。  手だ。  白い手袋をはめた小さな手。  でもヒトじゃない。ヒトに似ているけど何か違う。体温も柔らかさも感じない。  ……そうだ、人形の手だ。  後ろを振り返りたい衝動に駆られる。 『絶対に振り返ったら駄目だ。とり憑かれるぞ!』  再び、兄の声が聞こえた気がした。  でももう遅い。  少女の目はしっかり捉えていた。  宙に浮く、ピエロの姿を――。  
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