3903人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
喜びと安堵から、心が逸り、少女は思わず叫んだ。
「お兄さま――っ!!」
少女が手を伸ばし家門にその小さな指が触れる、まさにその時。
――――ねえ。僕と遊ぼうよ。
何かが少女の肩にズシリとのしかかった。同時に、少女の心臓は跳ね上がり、全身を恐怖の波が襲う。
ゆっくりと少女は、自分の肩に視線を動かした。
手だ。
白い手袋をはめた小さな手。
でもヒトじゃない。ヒトに似ているけど何か違う。体温も柔らかさも感じない。
……そうだ、人形の手だ。
後ろを振り返りたい衝動に駆られる。
『絶対に振り返ったら駄目だ。とり憑かれるぞ!』
再び、兄の声が聞こえた気がした。
でももう遅い。
少女の目はしっかり捉えていた。
宙に浮く、ピエロの姿を――。
最初のコメントを投稿しよう!