閉ざした箱の中

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そんなことよりも問題は、今手の中で早く出ろよと言わんばかりに震えて主張している携帯電話だ。 その携帯が表示する名前は“小宮 沙希” 本来であれば何よりも優先して出るべき、昨日付き合いがスタートしたばかりの愛する彼女からの電話だ。 しかし、隣りにはその彼女の親友でもあり、俺の元カノでもある“高松 恵利”がいる。 この女が隣りにいるだけでややこしいのにその上更に止まったエレベーターという密室の中で2人っきりだ。 この状況で電話に出ようものなら確実に今よりややこしい問題に発展するのは目に見えている。 だからといって出ない訳にもいかない。 昨日、彼女はこの時間に電話すると言っていたのだ。必ず出ろと念を押してまで。 あぁ…一体何故こんなことになってしまったのだろう。
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