閉ざした箱の中

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「そういえば、私たちの入学式の時も4月だって言うのにめちゃくちゃ寒かったよね。」 覚えてる?そう言いながら少し笑って、また何かを懐かしむように恵利は目を細めていた。 ったく人がどうするべきか考え込んでいるのに、少しは空気ってもんを読めよ。 でも…。確かにあの日も寒かったな。 そして、3年前の入学式の日に俺は君と出会ったんだよなぁ。 見慣れない校舎の廊下で まだあの時は知らなかったけれど、元々赤みがかった君の髪が夕日に照らされて真っ赤に染まっていてすごく神秘的だった。 それはモノクロの世界に色がついた瞬間だった。 夕日に染まった君の泣き顔を見てしまったから――……
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