2/4
前へ
/84ページ
次へ
空は青いのが常識で。 春は温かいのが当たり前で。 非現実的な事は起こらないのが当然だった。 私・芦原 珠子は、ただ今修学旅行で京都に来ています。 ある時は国の政治を行った都市。 またある時は歴史の渦の中心で、動乱の舞台となった場所。 そして今では重要文化財が数多ある古都――。 修学旅行では定番の場所も、友達がいないと大変つまらない。 別に苛めとかじゃなくて、私が友達を作るのが苦手なんだよね。 人間相手だと緊張しちゃって……。 奈良の鹿に煎餅をあげながら、溜め息を吐いた。 友達欲しいけど……無理なんだろうな。 もう二月だし、今更作ってももうこのクラスはすぐに解散だしね。 また溜め息を吐くと、鹿が鼻頭をお腹に押しつけて来る。 次を催促してるのか――。 売店で煎餅を補充して、千切ってあげる。 鹿は周りを囲んで来るけど、予算的にこれが最後かな。 最後の一枚をあげると、ベンチに座る。 雪がはらはらと舞って、寒さが増す。 こんな寒さの中、よく皆建築物とか見ている気になるな。 指に息を吹き掛けると、少し温かくなった……気もする。 鹿がもう無いのか?という目でこちらをじっと見る。 頭を撫でて謝ると、次々と去って行く。 最後まで残った鹿は一頭。 「もう鹿煎餅は無いよ?」 何を欲しがっているんだ。 鹿はふるふると首を振ると、膝の上に頭を乗せた。 「……鹿って以外と可愛いかも」 頭を撫でてあげると、気持ち良さそうに目を細めた。 昔から友達なんてまずいないのに、こうやって動物とはすぐに仲が良くなれるんだよね。 雪が毛皮に触れて溶けるとしっとり濡れる。 雪かぁ……。やっぱり寒いよね。 .
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加