第七十二章…鬼の真意

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「……おい、なんのつもりだ?」 呆気にとられつつも、警戒は解かずに問いかける。 つい先程まで浮かべていた鬼気迫るものと打って変わって、浮かんだ表情はいつもの羅刹のそれだった。 「ふん、なんのつもりも何もなかろう。弥勒には貴様の様子を窺うように言われたのみ。呆けて遊び回っていたと伝えればそれで事足りる」 緊張感の欠片もない小僧よな、と羅刹は皮肉を吐いた。 先程までのやり取りを完全に無視────いや、忘れている。 羅刹の中では、いきり立ち俺に斬りかかったことも、きっと“なかったこと”になっている。 「お前……」 「む?なんだその顔は。まさか我に異を唱える気か?小娘にうつつを抜かしていたのは事実であろうが」 おそらく怪訝な顔をしていただろう俺を、羅刹はそう切り捨てた。 ────気持ち悪い。 それが率直な感想だった。 こいつは異常だ。 いや、妖刀なんて代物に魅せられた時点で尋常ではないのだから、何を今さらという話だが、異常以外につける言葉が見当たらない。 常に堂々としていて、担い手の中では比較的理性的な方だ、なんて考えていた己のなんと愚かなことか。 ────こいつは危うい。 鎌足や浪川も危うかったが、こいつの精神状況と比べたらまだまともだ。 壊れかけなんてものじゃない。 こいつはもう、とっくに壊れている。 (ゴールド)と呼ぶ兄弟と死別し、麻耶姉と離れてから、きっと。
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