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「でも、あまり迷惑かけすぎるのも、やっぱり悪いよねー。あいつのところには帰りたくないし、何処かで時間潰さないと……」
助けを仰ぐように黒天を見上げ、彼女は再度大きなため息を吐いた。
────夜はまだ長い。
今帰っても、“あいつ”はまだ起きているだろう。
いや、そもそも帰る場所などないのだ。
彼女には帰りたい場所はあっても、帰っていい場所など用意されていないのだから。
「はるちゃんち……は駄目だよねー。突然すぎるし、やっぱり悪いし。迷惑、かけたくないし……」
腕を束ね、彼女はうーんと首をかしげた。
一度断った以上、今さらネットカフェに戻るわけにもいかず、彼女は今晩の宿探しに苦心する。
まさか花の女子高生が公園で一夜を過ごすわけにもいくまい。
彼女にも体面というものがあるし、そもそも若い女子が野外で無防備な寝姿を晒すなど危険すぎる。
一日二日睡眠をとらなくても、普段の彼女ならさして問題ではないが、こんな時間に外にいること自体が危険であるし、今の彼女は十分な休息を欲していた。
身体ではなく、心が。
焼き付いた映像を忘れさせてくれるような、安らぎの場を求めていた。
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