第五十九章…神の正体

12/83
前へ
/1015ページ
次へ
「でも、あまり迷惑かけすぎるのも、やっぱり悪いよねー。あいつのところには帰りたくないし、何処かで時間潰さないと……」 助けを仰ぐように黒天を見上げ、彼女は再度大きなため息を吐いた。 ────夜はまだ長い。 今帰っても、“あいつ”はまだ起きているだろう。 いや、そもそも帰る場所などないのだ。 彼女には帰りたい場所はあっても、帰っていい場所など用意されていないのだから。 「はるちゃんち……は駄目だよねー。突然すぎるし、やっぱり悪いし。迷惑、かけたくないし……」 腕を束ね、彼女はうーんと首をかしげた。 一度断った以上、今さらネットカフェに戻るわけにもいかず、彼女は今晩の宿探しに苦心する。 まさか花の女子高生が公園で一夜を過ごすわけにもいくまい。 彼女にも体面というものがあるし、そもそも若い女子が野外で無防備な寝姿を晒すなど危険すぎる。 一日二日睡眠をとらなくても、普段の彼女ならさして問題ではないが、こんな時間に外にいること自体が危険であるし、今の彼女は十分な休息を欲していた。 身体ではなく、心が。 焼き付いた映像を忘れさせてくれるような、安らぎの場を求めていた。
/1015ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14243人が本棚に入れています
本棚に追加