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「────御剣くんの家、駄目元で行ってみようかなー?御剣くんなら、事情を話さなくても、二、三日は泊めてくれると思うけど……」
一度言葉を切り、顎に手を当てて思案する。
しかしその考えを振り払うように、彼女はすぐにブルブルと首を振った。
「やっぱり駄目。だって、御剣くんに会わせる顔がないもんなー。私、結局何の役にも立たなかったし……」
連れていってくれないなら一人でも行く、何が起きても自己責任で片付ける。
そうまで言って右京に同行を許可されたというのに、いざという時、彼女は何もできなかった。
彼は必死で死に行く者を救おうともがいていたのに、彼女は恐怖に竦み上がり、置物のように立っていることしか────いや。
立っていることさえ、できなかった。
彼が何度も危険だと忠告してくれたのに、それを無視してついていった結果がそれだ。
要するに、彼女の覚悟なんていうものは、所詮口先だけのちっぽけなもので。
実際は、目の前で人が死ぬ筈がないと高を括っていたのだ。
────偽りの覚悟、詐りの正義感。
今も犯人を追い続けている彼とは比ぶべくもない。
それどころか、気を遣わせて、足を引っ張ってさえいる。
そんな自分に、彼女はほとほと嫌気がさしていた。
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