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「御剣くん?今度はどうしたんだろ?」
不思議に思いながらも、あまり間をおくことなく通話ボタンを押す。
心配性の彼のことだから、おそらくは昼と同じ用件なのだろうと考えながら。
「もしもしー?どうかしたのー御剣くん?」
完全に立ち直ったとアピールするように、普段通りの振る舞いを心がける。
役に立たないなら、せめて邪魔にならないようにと考えてのことだ。
彼の重荷になることは、彼女としても到底耐え難いことだから。
「小柴か。よかった、すぐ繋がってくれて……」
電話の向こうからは、ホッと息を吐く気配が伝わってくる。
そのわずか数秒のやり取りだけで、どれだけ彼に気苦労をかけているのかがわかってしまう。
「あはは、なーに御剣くん?まだ心配してくれてるんだー?私ならもう全然平気だから、気にしなくていいよ?」
「あ、いや……そうか。平気、ならいいんだけど……」
彼女としてはいつも通りに振る舞ったつもりだったが、やはりどこかに違和感があったのだろうか?
答える彼の歯切れは悪い。
明らかにまだ心配をかけているようだ。
「本当に大丈夫なのか?何か周りで変わったこととかは……」
「御剣くん、心配しすぎだよー。今日だって、電話もらってからすぐバイトに出てたんだからー。だから、私はもうぜんぜん────」
「な────!」
彼女の言葉を遮るように、彼の驚愕の声が耳に届く。
慌てているような怒っているような、そんな声が。
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