14243人が本棚に入れています
本棚に追加
「バイトに出てたって……まさかお前、家にいないのか!?今どこにいる!?」
「ど、どこって……えっと、近くの公園だよー?まっすぐ家に帰る気分じゃなかったから、少し散歩でもと思って」
「さん────!馬鹿野郎!!家で大人しくしてろって言ったのに、なんでそんなところにいるんだよお前は!」
スピーカーから響く切迫した叫び。
その声が、今がただならぬ状況だと教えている。
暢気に散歩などしている場合ではないと、そう告げている。
「な、なんでって、だって、私……」
「────いい!今は済んだことを話してる場合じゃない!とにかく、今お前の家に向かってる!だから、お前もすぐ家に戻れ!人気のない道は絶対通るな!いいな!?」
「ちょ、ま、待ってよ御剣く────」
「いちいち話してる時間なんてないんだ!いいな!?わかったな!?小柴!」
「わ、わかった……」
右京のあまりの剣幕に、彼女はただ頷くことしかできない。
今までとは比べ物にならないくらい怒気を孕んだ声。
その声が、彼女にそれ以外の選択を許さなかった。
「十分でそっちに行く!詳しい話は会ってからするから、お前も早く戻れよ!」
「わ、わかっ────」
ブツッ、という通話の切断された音。
彼女の答えを待つことなく、彼は電話を切ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!