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最後に耳に届いたわずかな風切り音────
おそらく彼はすでに彼女の家へと向かい始めているのだろう。
なら、彼女もこのままここにいるわけにはいかない。
彼は十分で行くと言っていた。
この公園から彼女の家までは急いでも十五分はかかる。
すぐにでも走り出さなければならないのだが────彼女は推理していた。
何故彼があそこまで取り乱していたのかを。
何故突然、彼女の元に駆けつけようとしているのかを。
────心臓が早鐘を打つ。
────背筋を冷や汗が伝う。
そう、導き出される答えなど一つしかない。
自分自信に何か大きな危険が迫っていると、そう解釈するしかない。
────彼は忠告した。
危険すぎるからお前は関わるなと。
────彼女は聞こうとしなかった。
真に彼女のためを思った、その忠告を。
────そして悟った。
その報いが────今己に降りかかろうとしていることを。
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