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背後には、いつの間にか何者かの気配。
首筋に感じる冷ややかな金属の感触が、その言葉が脅しではないことを告げている。
もし彼女が逆らおうものなら、声の主は何の躊躇いもなく彼女を殺すだろう。
「声を出しても殺す。助けを呼ぼうとする素振りを見せても殺す。俺が要求する以外の動作を見せたら命はない。わかったか?わかったならゆっくりと右手をあげろ」
「あ……は────」
言われるがままに右手をあげる。
当然だろう。
今この状況において、彼女に許された自由など何一つない。
呼吸をすることさえ背後の人間の許可が必要な状況。
彼女の生殺与奪の権は、完全に握られてしまっているのだから。
「振り向かず、ゆっくりと歩け。怪しい動作を見せたら死ぬぞ」
「は、は────」
他人のものになってしまったように動かない身体を、全神経をすり減らすようにしてかろうじて動かしていく。
歩けと命じられた以上、止まっていることすら許されない。
震えの止まらない足を引きずるようにしながら、彼女は再び公園内に歩を進めていく。
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