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明かりを消し、カーテンも締め切った真っ暗い部屋の中、まるで目覚めを促すようにけたたましい携帯電話の着信音が鳴り響いた。
それに誘われるように、閉じていた重い瞼をあげる。
「────ん。なん、だ?うるさいなぁ」
布団から出ることはせず、ベッドに横になったまま脇に置いた携帯電話に視線を向ける。
アラームをかけた覚えはない。
恐らく誰かからの着信なのだろうが……。
千尋には、ゆっくりと休むから起こさないでくれと伝えてある。
だから時間は気にしないでもいいのだが……。
携帯電話にではなく、枕元の目覚まし時計に手を伸ばす。
「十時少し前、か……。起きるにはまだ少し早いんだけどな」
怪我の治りを早くするため、休んでいたかったというのが本音だ。
慶兄にも言われたが、いざというときに動けるように、静養することこそが今俺のすべきことだと思う。
千尋も七菜も、それをわかっているからこそ、俺が真っ昼間から夕飯もとらずに熟睡することを納得してくれたのだろう。
もう十分に休んだと言えば休んだのだが、この時間に起きてしまってもすることがないんだよなぁ。
部屋の中には未だ着信音が鳴り響いている。
あまり電話をとりたくない俺の気などまるでお構いなしらしい。
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