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「閻刀・夜摩、か。つまり、お前が夜摩と名乗ってるのは……」
「ああ、ご想像の通りだよ。俺が自ら名付けたわけじゃない。ただ単に、この刀の名を借り受けただけだ。もっとも、“この”と言ってもお前には見えないだろうが」
背後にあるトランシーバーからそんな声が響く。
機械を介してとはいえ、その口調からは余裕がありありと感じ取れた。
「────夜摩、閻魔大王。絶対的な力を持つ、地獄の裁判官。無罪と断ずることはなく、赦すことも当然ない。ただただ罪人を裁くだけの圧倒的な存在。俺が名乗るのに、これ以上なく相応しい名だと思わないか?」
作業じみた夜摩の問いかけ。
それに答えを返すことは無意味だろうし、夜摩も何も答えを求めているわけではないだろう。
────夜摩の判決に無罪はない。
地獄に落ちた時点でその罪人の判決は決定している。
地獄に落ちた罪人を、慈悲なく情けなく容赦なく、一切の例外なしに裁くだけの存在。
────なるほど。
それが誇れることかどうかは別として、確かに今の穂村暁そのものだ。
「この力を得られなかったなら、俺は裁きなど下せなかったろう。ただの一介の、どこにでもいるありきたりの高校生だった、俺ではな。この刀の存在あって、はじめて俺は夜摩足る存在となれるのさ。弱き者、迫害されし者の代弁者、夜摩にな……」
弱者の代弁者。
弱き者のために戦う、復讐代行人。
それだけ聞けば、まるでどこぞの義賊のようだが、そんないいものでは断じてない。
慶兄の言っていた、穂村が何のために犯行に及んでいるかは、本人にさえわからないという言葉。
その意味がなんとなくわかってきた。
それと同時に、激しい嫌悪感も覚える。
だってこいつは────
こいつは、まるで────
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