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「────憐れなやつだな、穂村暁」
「……なに?」
「憐れなやつだって言ったんだよ。そんな降ってわいたような力を享受して、強くなったつもりでいるのがさ。お前に限らず、妖刀に魅入られたやつはみんなそうだ。誰もかれもがそれを自分の力だと思い込んでやがる」
それに、本当に腹が立った。
自分の力のみを頼りにこんなことをしているならまだ許せる。
だが、そんなよくわからないものを頼りにし、挙げ句自分の力と偽り、それで人を裁こうなどと……到底容認できるものではない。
そんなものに頼っている時点で弱い存在だということに、まったく気づいていない。
「今のお前に比べれば、挫折する前のお前の方がきっと強かった。無力だと痛感しながらも、もがいて、足掻いていた頃のお前の方がな」
「な────知ったような口を聞くな……!お前に……あの頃の俺の何がわかる!?俺の望みを果たすためには力が必要だった!妖刀はその力そのもの!その力の善悪など関係ないだろう!」
今まで会話をしていて、初めて夜摩の感情が乱れたのを感じ取る。
取り繕っていない、剥き出しの感情。
その荒波が、割れんばかりの音量となってトランシーバーから吐き出される。
その叫びを、ただ冷めた気持ちで聞いていた。
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