第六十二章…Lost Memory

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「負けられないよな。戦う前から負けてるようなやつに、負けていい筈がない。(はな)から負けるつもりなんてなかったけど、より一層そう思ったよ。お前には────絶対に負けられない」 穂村に負けるということは、俺の十六年の人生すべてが否定されるのと同義だ。 俺が俺であるために。 こいつには────絶対に勝たなければ。 「正直、俺はお前が嫌いだ。お前が俺に嫌悪感を覚えるように、俺もお前が気に入らない。ここでお前と戦う理由は山ほどあったけど……今はそれだけで十分だ」 えもいわれぬ嫌悪感。 ────その正体はもうわかっているけれど。 だからこそ、決着をつけよう。 穂村とだけではなく、それは──── 「黙って聞いていれば好き放題言いやがって……!いいだろう!そこまで死に急ぎたいなら望み通り消し炭にしてやるよ!夜摩の異能、『過熱する狂気』《オーバーヒート》でな!」 穂村が歌うように異能の名を名乗りあげると同時に、眼前に揺らめいていた炎に命が宿る。 それはまるで獲物を補足した大鷲のように。 一直線に俺のもとに飛来した。
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