第六十二章…Lost Memory

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「────っ!」 高速で迫る火の玉を紙一重で回避する。 しかし、回避したのもつかの間。 そのまま通りすぎていくかと思われた炎は突如動きを止め、超至近距離からのリターンとなって迫り来る。 「くぁ────!」 ほぼ零距離からの火炎弾。 回避動作に移る隙すら与えない速攻を、無理に身を捩ることでなんとか躱してのけた。 だが、それで難を逃れたわけではない。 意のままに動き回る炎弾は俺に休息を許さない。 躱したと思えばすぐにそこから迫ってくる。 先程までの攻防とはまるで違う。 夜摩の異能は連射がきかない。 故に、その攻撃には確固たる間────タイムラグがあった。 その間が、今はない。 次の予備動作に入る前にはすでに炎が直撃寸前まで迫っている。 いや、迫っているのではない。 “直撃寸前の場所”から攻撃がスタートするのだ。 こめかみに銃口を突きつけられている状態から避けろと言われているようなものだ。 いくら視覚で軌道が確認できようと、最適な回避動作をとることは難しい。 当然、無理な体勢で避けることが多くなる。 その回避行動が、治りきっていない身体に負担をかけることは言うまでもない。
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