第六十二章…Lost Memory

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「くぅ────!」 回避をするごとに疼く鈍い痛みに思わずそんな声が漏れる。 キシキシと悲鳴をあげる肋と鎖骨が自然に動きを鈍くさせる。 そんな俺を嘲笑うように、跳ね回る炎は速度を緩めることはない。 無軌道にして変幻自在。 全方位からの乱反射攻撃。 それは壁という壁に跳ね返るスーパーボールの様。 いつの間にか見えない立方体に閉じ込められてしまったのではないかとさえ思えてくる。 それでも辛うじて直撃を避け続けられているのは、なんとか軌道の予測ができているからだ。 穂村の思考が完全に読めているわけではない。 俺の目に見えるところで戦った七菜とは違い、穂村はその姿を隠している。 そんな状況下で正確な予測を立てるのはさすがに困難だ。 だからもう、それは半ば当てずっぽうの攻撃予測。 それがたまたま当たっているから、俺はまだこうして生きている。 だが、その予測がわずかでもずれるようなことがあったら────それはそのまま俺の命運に直結するだろう。
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