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乱れ舞う火炎が耳元を掠めていく。
熱い、と感じる暇もない。
それどころか、今は呼吸の間すらも惜しい。
たかが息継ぎですら致命的な隙になりかねない。
縦横無尽に荒れ狂う炎から、無呼吸状態で身を躱し続ける。
思考はすべて予測に費やし、身体は脳からの命令についていくのが精一杯。
穂村の居場所を考える余裕なんてまるでなくなった。
ただ一つ、この状況下で断言できることは。
このまま回避を続けているだけでは、勝機は万が一にも訪れないということだけだ。
ならどうする?
逃げ続けて状況が好転しないなら、如何にしてこの状況を打開する?
その一手は────
「────!?」
瞬間、背筋が凍りついた。
繰り出される筈の攻撃が来ない。
ブーメランのように急旋回し襲い来る筈だった炎撃は、いつまで経っても俺の視界には映らない。
────予測が外れたわけではない。
外れたのではなく、予測の埒外。
今の今まで俺の周囲を飛び交っていた火の玉は、いつの間にか完全に“消失”していた。
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