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「あ、つぅぅ────!!」
それを認識すると同時に、背中に焼きごてを押し付けられたような痛みが走った。
確認するまでもなく、背中に直撃を受けたのだろう。
着こんだ上着がメラメラと燃え上がっている。
「く、はっ────!」
その痛みに耐えたまま、廊下の壁に背中を叩きつけた。
「は、はっ、はぁ……」
一分の隙間もなく密着させ、押し付けるようにして火を消し止める。
真空とまではいかないが、助燃性のある酸素濃度が低くなければ、火の勢いが弱くなるのは自明の理だ。
とはいえ、今のはかなりまずかったが。
視覚で炎を追えるようになったため、感覚の方がお留守になっていた。
突然炎が消え、呆気にとられた瞬間を狙われた。
目に見えるものにだけとらわれすぎていた。
意のままに俺を追跡していた炎も、所詮は夜摩が異能で作り上げたもの。
自由に動かすこともできれば、消すことも思いのまま、というわけだ。
当然、動かしていた炎を消せば、新しく炎を放てる。
追跡してくる炎に対して回避動作に入っていた俺からすれば、その奇襲を避けられる術はなかった。
まさしく虚を突かれたというやつだ。
意のままに動く炎と座標指定型の炎とを使い分けられたら……完全に回避することは不可能だろう。
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