14243人が本棚に入れています
本棚に追加
「くく、くはははは!!いい様だな御剣右京。情けない悲鳴がこちらまで聞こえたぞ?」
「…………」
「くく、しっかりしろよ。俺を倒すとかなんとか言ってただろう?早くやってみせ────」
「ああ、そうだな。お望みとあらばやってみせようか。いい加減、逃げるのにも飽きてきたしな」
そう答え、感覚を確かめるように左腕を回し、壁際を離れる。
腕を上げようとすると鎖骨にかなり痛みが走るが、我慢できないほどではない。
どちらかというと肋の方がひどい。
身体を捩る動作をしたり、呼吸が乱れる度にかなり痛む。
先程の大ジャンプのおかげでやはり多少悪化したか。
……まあ仕方ないだろう。
泣き言を言っても怪我が治るわけでもなし。
限界を迎える前に、穂村を仕留めればそれでいい話だ。
「────なんだって?今お前、なんて言った?」
「だから、逃げるのは飽きたって言ったんだ。ようやく覚悟もできて、推測も立ってきたからな。もう逃げる必要もなくなった」
言って、ベルトに差していた逆刃刀の鞘を左手に握る。
先がないとわかった以上、回避に没頭する意味はもうない。
刀を手に取った以上────ここからは剣士の領分だ。
最初のコメントを投稿しよう!