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「推測、憶測……そんな不確かな情報に身を委ねる気か、お前は?なんだ?ついに勝負を投げたか?」
「投げてはいないけどな。どうせこのままいってもじり貧だ。だったら、動けるうちに動いた方がいいだろ。外れてたら外れてたで、またその時考えればいい話だ」
階段へ向かい、一歩踏み出す。
痛みにより乱れていた呼吸ももう整った。
「……仮にすべてお前の言う通りだったとしよう。だが、満足に回避もできないお前が、俺の下に無事たどり着くことができると思うか?それとも、俺の異能から逃れる算段でもついたか?」
先程まで黙り込んでいた穂村は、途端に饒舌になり質問を投げ掛けてくる。
その口調からは、あれほどありありと感じられた余裕が掻き消えている。
逆に、俺の開き直ったような態度に不安感を抱いているようだ。
懐疑、焦燥、そして────恐怖といった感情を。
その感情は、穂村にとっては足枷、俺にとってはつけ込む隙となる。
夜摩という堅牢な城を、一気呵成に攻め落とすにはちょうどいい頃合いだ。
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