第六十二章…Lost Memory

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「ああ、確かにもう躱すことは難しい。お前の異能、『過熱する狂気』《オーバーヒート》って言ったか?いや、よくできた能力だよ。上手く使いこなせば、完全に逃げ道が潰せるんだから。そして、お前は実際その異能を使いこなしてる。その多彩な攻撃、完全に避けることはまず不可能だろうな」 「なんだ、思いの外置かれた状況を理解しているようで安心したよ、御剣右京。万策尽きて破れかぶれ、というわけか。くく、なかなか素直なところもあるじゃないか。どうだ?今頭を下げれば、苦しめずに殺してやらないことも────」 「は?勘違いするなよ。避けることは難しいってだけで、諦めるなんて一言も言ってないだろ。いったい何を聞いてたんだよお前は」 「なん……だと?」 「破れかぶれだなんだって、勝手に決めるなよ。俺は確固たる勝算を持ってお前の下に向かうんだ。ああ、避けることは確かに難しいさ。なら────避けなければいいだけだろ?」 左手で鞘を握ったまま、また一歩踏み出す。 体幹はずらさぬように、しっかりと重心は落としながら。
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