第六十二章…Lost Memory

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「な────に?」 呆然とした声。 自らの意思で消したのではなく、何らかの原因によって消された炎。 それを、見えずとも感じ取ったのだろう。 全霊を込めた異能による一撃。 それが不発に終わったのだから、その反応も当然だ。 異能が掻き消されるという不測の事態。 穂村からすれば予想外。 俺からすれば────予想通りの展開。 「────確実に直撃した筈……いったい何をした、御剣右京」 「何を?別に、何も特別なことはしてないさ。それよりどうした?魂ごと焼き尽くすんじゃなかったのか?」 状況を探るような穂村の問いかけに、挑発気味に問い返す。 しかし、やはり穂村にはこちらの様子が見えていないらしい。 もし見えていたなら、そんな質問をする筈がないのだから。 熱を探知して攻撃してくるというのはかなりいい線をついていたようだ。 それが初めからわかっていればもう少し準備もできたというものだが……もうそれも必要ないだろう。
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