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「ふざけるな────!空を……物体ではなく、気体を斬るなんて、炎を斬るよりあり得ない!絶対に何かタネがある筈だ!いったいどんな奇術を使った!?」
「奇術?生憎俺はそんなことができるほど器用じゃない。タネも何もない、ただの強引な力業さ。まあでも、確かに斬ったっていうのは誇大広告だったかな。俺はただ、溝を作っただけなんだから」
空気と空気の間に異物を挿入することで、それを分断する。
居合い抜きによって発生した剣圧で、一瞬────ほんの一刹那だけ空気に溝を作っただけ。
それを炎の中心、言わば核と言えるような部分に向けて振り抜いた。
如何に激しく燃え盛る火炎と言えど、中心から掻き消されては形を保てる筈もない。
真ん中にぽっかりと穴が開いてしまっては、千切れ消え去るのが道理だ。
事実、穂村の放った炎は、火の粉だけを残し脆くも霧散した。
だからこれは、奇術でも何でもない、タネも仕掛けも何もない単純なこと。
穂村が異能により生み出した炎より、少しだけ俺の剣圧の方が勝っていた。
たとえ、それが紙一重だったとしても────その事実は揺るがない。
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