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「行くの?キョウくん……」
「────ああ。事態が少し悪化したみたいだ。ちょっとだけ出てくるよ」
「……少しだけ話が聞こえたの。加奈ちゃんが、危ないんだよね」
「危なくない。俺が助けるから」
話しながらも、足は止めず二人に近づいていく。
今はこうして話している時間も惜しい。
「ごめんな七菜。今日は一緒に寝れなくなっちゃったみたいだ」
「おにいちゃん……」
「嘘つきでだらしないお兄ちゃんでごめん。だから、七菜は俺のことをいっぱい怒っていい」
少しだけ足を止め、七菜と目線を合わせるように屈み、その頭を撫でる。
怒られても仕方ない気でいたが、七菜はそうしなかった。
大粒の涙を流しながらも、心配げな瞳を向けてくる。
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