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「……ううん。わたし、怒らない。絶対怒らないから、だから────必ず、帰ってきてね?おにいちゃん……」
「────ああ、絶対戻るよ。千尋、七菜のこと、頼むな」
「うん……。キョウくんも、どうか気をつけて……」
千尋の言葉に応えるよう、わずかに頷いて二人に背中を見せる。
玄関の戸に手をかけたところで、長くはならないよう一度だけ振り返った。
「遅くなるかもしれないから、二人はもう休んでてくれ。小柴は……絶対に連れて帰るから」
胸に立てた誓いを口にすることによって、より一層強いものにする。
その余韻がまだ漂っている内に、二人の返答を待たずして玄関を出た。
向かう先は決まっている。
だが、到着する前に、小柴本人に連絡を入れておく必要があるだろう。
いざ家まで行って、入れずに立ち往生では話にならない。
小柴の家の方へ足を向けると同時に、俺は携帯電話を手に取ったのだった。
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