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「本当に大丈夫なのかい?まだここにいてもいいんだよ?」
「平気ですよー。ずっとここにいさせてもらうわけにはいきませんから」
ネットカフェのレジカウンターの前、少女は男性の問いにそう答えてみせる。
しかし、それがただの強がりであるのは明らかで、少女の顔はいまだ蒼白に染まっていた。
「……加奈ちゃん、無理してないかい?本当はまだ家に帰りたくないんだろう?顔が真っ青だよ」
「店長の気のせいですよー。帰りたくないのはいつものことですけど。まったく、店長は心配性なんだから」
気丈に笑って、少女、小柴加奈は男性の心配が杞憂だと説いた。
────彼と加奈の付き合いはそう長くない。
だが、それが彼女が彼に心配させまいと吐いた嘘だということはすぐわかった。
いつもは平然と嘘を吐き通す彼女ではあるが、本当に辛い時、彼女は途端に嘘が下手になる。
貼り付けた笑顔は嘘っぱち。
その下の素顔は、おそらく救いを求めるような泣き顔である。
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