序章  雪月牙

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美しく降り注ぐ雪。それが地面に溜まり、それはそれは見る者を魅了する銀の世界へ、空に妖しく浮かぶ満月が、また銀世界をより一層輝かせている。 だが、一度牙を向けられると白く美しい雪は、ドス黒い赤き雪と化してしまう。 私の村にもその牙が向けられ、村人達は次々に殺され遂には幼なじみの彼もが……。 私の頭の中は雪と同じように真っ白になり、意識は薄れていき、この世の終わりにも思えたが、剣士と思われる一人の男がそんな私を救ってくれた。 剣士は、近くの村まで私を連れて行ってくれ、生きる道を示してくれた。 だが、この頃の私は記憶がなく自分の殻に閉じこもっていた……それでも生きる為に働いた。 何故生きなきゃならないのかわからない、これからどうすれば良いのかわからない、それでも必死に働いた。 いや、違う……流されていたのだ。 きっと成り行きに身を任せていたのだと思う。 私がこの村の宿屋で、住み込みで働かせて貰って二度目の冬を向かえた……。 今まで働いていた甲斐があって宿屋の店主は、私の為に家を用意してくれた。 休日の日は特に何もする事もなく、その家で一日過ごす、自分が何をすべきなのかわからず、働く時以外は人との関わり合いを持たず寂しい休日を過ごす、いや生きながらに死んでいる私には、たぶん寂しいなんて感じていなかっただろう……。 しかし、そんな私をかまう男の子がいた。歳は私と同じくらいに思える。 私が休みの日は、たまに遊びにきては、話し掛けきた。 その度に私はそっけない態度で返す、それでも彼は嫌な顔をせず、時々遊びにきた、月に大体4回くらいだろうか、これが1年半前に知り合ってから、ずっとだ。 来られても相手にしない私を何故かまうのだろうか?最近はそんな事ばかり考えていた。 今日も彼は来ていた。外は真っ白な雪が降り注ぎ、それはそれは美しかったのだろうが、私はまったく興味を持ってなかった……。
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