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私がこの村に訪れてから、二度目の冬がやってきた。
外は雪が降り注ぎ一面は銀世界が広がる。
空には妖しき光を放つ満月が浮かび、私は何も考えず、ただボーっと窓から外を眺めていた。
そんな私の後ろで私の背中を見る、変わった男の子。
彼は知り合ってから、時々私の家に来ては、特に何もせず帰っていく。
いや、私が相手をしないから何もしないのだろう……でも何故か、飽きもせずに私の元にくる変わった人だ。
「雪を見てるのが好きなのかい?」
と後ろから声が聞こえる。
「別に」
と振り返りもせずにそっけなく私は返した
「でも綺麗だとは思わないかい?」
「考えた事ない」
と、彼とはこんな会話ばかりだ。それでこの後、いつも沈黙が続く……だが、今日は何故か違った。
「勿体無いなぁ」
と彼が続けてきたのだ。
「えっ!?」
何が勿体無いのか気になったのもあるが、何よりいつもと違う状況に驚き私は降り返った。
彼は私の顔を見て、少し微笑みながら穏やかな口調で……
「……こんな綺麗なものを見ても何も考えないなんて勿体無いないよ……雪だけではない、花も木も水も……世界に沢山綺麗なものがあるんだよ」
と言ってくる。
「そ、そうなんだ」
私はなんて返せば良いのか、わからず戸惑ったがいつものように、そっけなく返した。
「そうだ!!」
と彼は何か閃いたのか?私に歩み寄ってくる。
「おいで」
と言って彼は私の左腕を掴んできた。
「えっ!?なに?」
私は少し驚く。
「良いから良いから」
と言って私の手を引っ張って外に連れ出してきた。
「外に出てどうするの?」
と疑問視する私。
「雪合戦さ!」
と穏やかな口調で言い放つ。少し笑みを浮かべていた。
「なんで雪合戦?」
「良いから良いから」
と言って彼は雪を丸め投げてきた。私はその場から一切動かず、顔に直撃した。
「ほらほらちゃんと避けないと、どんどん行くよ」
次々に雪を丸め投げてくる。
わけわからず私も雪を丸め投げ返した。
「そうそうその調子」
彼が笑顔で雪を投げてくる。
私も負けじと彼の雪を避け、必死に投げ返した。
「ちゃんと持っているじゃん」
と彼が雪を投げながら意味のわからない事を。
「何が!?」
と私は雪と一緒に言葉を返す。
彼は手を休め、ゆっくりと口を開き……。
━━━ 笑顔!━━━
えっ!?私……今、笑っていたの?自分では気付いていなかった……。
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