序章  雪月牙

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この後、村は私が生まれ育った村と同じように海賊に襲われ銀世界はドス黒い赤き世界に変貌した。 目の前に倒れる彼の姿を見て、悪夢が蘇る。 私の失われていた記憶が戻ったのだ。 もう嫌だ。そう頭によぎる……二度も目の前で大切な人が倒れている光景見てしまい、もう死にたいまで思った。 でも、この胸の奥から込み上げるのは何? 深い絶望の中にあるドス黒い光……これは憎しみ。 私は死にたいと思ったが、それ以上に海賊達を憎んだ。深い深い憎悪が目覚める。 (憎い……二度も大切な者を奪ったこいつらが憎い!!) 私の心が深い憎しみに支配されたその時である。 【憎むべき者がおるなら我を欲せよ!!】 「なに!?……今の声は?」 突如心に声が響いたのだ。 【我は汝の魂に呼び覚まされた者なり!さあ我を欲せよ!!】 私はその声に導かれたのか?自然に右手が上に挙がった。 そして頭上に強い光が現れ視界が遮られる。 その光がおさまると私の手には剣が携われいた……。 「こ、これは……?」 その剣をまじまじと見る。 【我は汝の力!さあ共に戦わん】 と声が響く。その声はなんと剣から伝わってきたのだ。 …………… 空に妖しく煌めく満月が浮かび、大地は一面銀世界。 とある村では、ドス黒い赤き世界が広がり、無数の死体が転がる。 その中にたった一人に少女が立っていた……。 少女に手には血で赤く染まった剣を持っている。 その少女の顔は暗く下をうつ向き、口元は笑みを浮かべ、目から涙が滝のように流れていた……。
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