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「胎内巡り…するか?」
「たいないめぐり?
何ですか…それ?」
「光りも入ってこない真っ暗な地下のお堂を壁に着いている数珠を頼りに進むんだ。
最奥には石があって、願いを思いながら回すと1つだけ願いが叶うらしい。」
俺は***に簡単に説明してやった。
すると無邪気な笑顔で俺を引っ張ってくる。
「それやってみたいです!
どこにあるんですか?」
「少し戻った所にあるお堂だ。」
***とお堂まで行くと列が出来ていた。
その列の最後尾に並び順番を待つ。
しばらく待つと直ぐに俺達の番が回ってきた。
金を払い、***と一緒に進んでゆく。
「中は本当に暗いんで頼りの数珠を離さないでくださいよ―!」
料金を徴収している寺の人間の声を背中に受けながら地下へと入っていった。
「うわっ…本当に真っ暗…何も見えないですね……。
ってあれ?才蔵様?
あっ…、じゅっ数珠離しちゃった――!!」
「何やってるんだ…。」
一人で騒いでいる***の手首を掴んで正規の道へ連れ戻した。
「すみません……。」
「気にするな。
後ろにいる***の様子に気づかずに先に行った俺が悪かった。」
「ありがとう…ございます。」
***の手首を掴んだまま暗闇を進んでいく。
しばらくすると蝋燭にボンヤリと照らし出された平たい円形の石が現れた。
「この石のようだな…。
***、お前が先にやれ。」
「えっ?あっ、はい…。
ではお先に………。」
***はお堂に入る前に教えられた通り石を回しながら願いを込める。
「才蔵様、終わりましたよ。
お次どうぞ。」
***に促されて俺も同じように石を回す。
2人とも終えると出口に向かって暗闇を再び歩き出した。
行きとは違い、帰りは直ぐに外に出れた。
「眩しい……。
あっ…もうこんなに日が暮れてきてたんですね。」
***は目が眩んだのか何度も瞬きをするが、目が慣れると夕暮れに見とれていた。
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