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「~♪」
両手一杯に南天の実を抱えながら、椿鬼は人里へと下りていた。
明日は皆で雪兎を作ろうという提案で、椿鬼は早朝、持てるだけの量の南天を摘んできたのだ。
あの日、椿鬼が子供達と遊んだ日からずっと、人里に下りては子供達の輪に混じって遊んでいる。
寒空の下、頬を染めながら遊ぶ子供達が羨ましかった。
隣の子と声を密めながらこっそり笑い合い、あっちに行こうと手を繋ぐ。
夢にまで見たその光景に、ただただ椿鬼の心は舞い上がっていたのだ。
「ぁ。――椿鬼!」
笑顔で手を降る少年。それに応える様に椿鬼も思いきり手を振った。
――バラバラバラバラ…
「「あ」」
真っ白な雪面に広がる真っ赤な南天。
慌てて皆が駆け寄って来る。
「何やってんの~!」「ごめんごめん!」
こんな些細な事さえ嬉しくて、椿鬼は顔を緩ませる。
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