椿鬼

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嬉しくて、嬉しくて。 「へぇ、椿鬼ってお父とお母居ないんだぁ。」 「ん―…」 椿鬼の横で雪を固めるのは一番の仲良し、真吉。 あの日、椿鬼の手を引いてくれた少年だ。 二人の作った雪兎を並べる。 「しじまがね、居てくれるんだよ。 生まれた時からずうっと一緒。 あたしは椿の木の下に居たから“椿鬼”って名前にしたんだって。」 「ふーん…?しじまって椿鬼の兄ちゃんなの?」 不思議そうな真吉の瞳に今度は椿鬼が疑問に思う。 ……兄ちゃん? 他の鬼はどうかは知らないが、そもそも椿鬼には家族という観念が無い。 寧ろ、自分に父と母という存在が居たのかさえ分からない。 ただ側に居るだけ。 「兄ちゃんてなぁに?」 え、と真吉は眉を潜める。 一生懸命説明する真吉に椿鬼はきょとんとするばかり。 「なんか、椿鬼って変わってる。」 .
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