14人が本棚に入れています
本棚に追加
嬉しくて、嬉しくて。
「へぇ、椿鬼ってお父とお母居ないんだぁ。」
「ん―…」
椿鬼の横で雪を固めるのは一番の仲良し、真吉。
あの日、椿鬼の手を引いてくれた少年だ。
二人の作った雪兎を並べる。
「しじまがね、居てくれるんだよ。
生まれた時からずうっと一緒。
あたしは椿の木の下に居たから“椿鬼”って名前にしたんだって。」
「ふーん…?しじまって椿鬼の兄ちゃんなの?」
不思議そうな真吉の瞳に今度は椿鬼が疑問に思う。
……兄ちゃん?
他の鬼はどうかは知らないが、そもそも椿鬼には家族という観念が無い。
寧ろ、自分に父と母という存在が居たのかさえ分からない。
ただ側に居るだけ。
「兄ちゃんてなぁに?」
え、と真吉は眉を潜める。
一生懸命説明する真吉に椿鬼はきょとんとするばかり。
「なんか、椿鬼って変わってる。」
.
最初のコメントを投稿しよう!