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カイは誰もいない裏庭にいた。
ライには学園長に呼ばれたと言ったが、1人になるための単なる口実だった。
しかし望むようにはならなかった。
カイは後ろに気配を感じ、ゆっくりと振り向く。
「やぁ少年」
そこにいたのはバルトだった。
カイは何も答えず、誰もいない場所を求めて歩み出す。
「ちょっ、待て待て!」
バルトは慌ててカイを引き止める。
「何だ」
カイは不機嫌そうに振り返る。
「今日学園長に怒られたんだろ? 」
バルトは片方の口端を少し上げて言った。
「世間話をする暇はない」
「そう怒るなよ少年!子供は子供らしく笑ったらどうだ?ほら、こーやってな!」
バルトは両方の人差し指で口端を思いっきり上に引き上げ、目を細めた。
「馬鹿馬鹿しい」
その行為はカイを更に不機嫌にさせた。
カイは歩みを進めようとして、何かを思い出したようにバルトの方に向き直す。
「ん?」
いきなり見つめられたバルトはそのままの状態で首を傾げる。
「どうしてお前は俺を知っている。
監視役とはどういう意味だ。
お前はランスの者か。」
「そんなに一気に質問されても困るよ少年~」
とぼけるバルトにカイは視線で質問に答えろと訴える。
「わかったわかった、答えるよ~。
俺はランスから少年の監視役として派遣された」
「何故俺を監視する必要がある」
「少年の暴走を防ぐためさ♪」
暴走した経験のあるカイは何も言い返せない。
「総司令は少年に普通の生徒として学園生活を送ってもらいたいと思っておられる。だから、少年が暴走したときはカイルと俺の使い魔で食い止める。これが俺に下された任務ってこと~」
バルトはボサボサの頭を掻きながら微笑んで言った。
「シュナの命令か?」
バルトは微笑んで頷く。
「そろそろ寮に帰らないと皆心配するよ」
いつの間にか時間が経ち、夕飯間近となっていた。
カイはまだ聞きたいことはあったが、バルトと別れ、寮に戻った。
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