†悪の囁き†

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「いきなり呼び出すな」 カイは不機嫌さ剥き出しで総司令室の扉を開けた。 「やあやあ、すまなかったね!」 シュナは悪びれる様子もなく、クッキーを口の中に入れた。 「眠れてないみたいだね」 シュナはカイの顔を見て言った。 「大丈夫だ」 カイは見つめてくるシュナから視線を外し、ソファに腰掛けた。 「話してくれないかい?」 シュナはカイと向き合うように座り、真剣な表情で言った。 二人の間に沈黙が流れる。 「声が…声が聞こえるんだ」 カイは観念したかのように話し出した。 シュナは真剣にその話しを黙って聞いた。 カイが、声の事を話し終わると、シュナは何かを思案するように立ち上がった。 そして、静かにカイの方に向き直り口を開く。 「この前、カイ達が捉えた者は人間だ。闇堕ちをする前のね」 シュナの口から発せられた言葉にカイは目を見開いた。 「憎しみを持った人間が堕天し、闇に堕ちる。心は悪と化し、姿は獣のようになる。闇堕ちは存在したんだ」 「じ、じゃあ俺が殺していたのは…」 カイは必死に絞り出した掠れるような声で言った。 「人間だ」 「俺が恨んでいたのは…人間… シルビィも…人間が…」 カイの瞳が段々と曇って行く。 「主!?」 異変を察知したカイルが顕現する。 そして、何故弱っているカイにその話しをしたんだと、シュナに目で訴える。 「これが真実だからだ」 そう言うとシュナは部屋から出て行った。 「俺は…俺は…」 カイは目を見開いたまま、何かをつぶやいている。 「主よ!気をしっかり持つのだ!!」 カイルが必死にカイの肩を揺さぶる。 「疲れた疲れた~」 そのとき、扉が開き、へらへらとシュナが入ってきた。 「え?何でカイがいるの?? それにカイルまで??」 シュナは驚いたようにカイの元へと駆け寄った。 「何をとぼけたことを!」 カイルは怒りに満ちた目でシュナを睨みつける。
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