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「総司令の姿をした偽物がランスへ侵入した!お前たちは気づかなかったのか?」
ロムはランス警備兵に尋ねる。
怒りの表情はしていないが怒気が僅かに漏れている。
「は、はい!総司令の魔力は感知したのですが、それ以外の者の魔力は感知しておりません!」
相手は中々の手練れである事は確かである。
なぜなら、ランスの警備に選ばれた者はそれなりの実力者を揃えているからだ。
ロムは眉間に皺を寄せ思案する。
総司令であるシュナの魔力を完全に模し、カイに気付かれず接触する者。
ロムの脳裏にある者が思い浮かぶ。
「ふっ、まさかな」
しかしロムは、ありえないと頭を一つ振り、それを消し去る。
ロムはシュナに呼ばれ、氷に包まれたカイを見た。
それと同時に闇堕ちが事実だと知った。
思考が一時停止するほど驚いた。
自分が倒していた魔獣が、人だったのだから。
しかし、カイのように魔獣に対しての恨みはないため、衝撃は受けたがカイ程ではない。
上層部では闇堕ちの事実は下の者には口外しないという事で決定したようだった。
魔獣に恨みを抱くものは少なくはない。
その者たちにさらなる闇を与えれば必ず闇に堕ちるだろうという見解だ。
ランス上層部では、性格上問題はあるものの、強さは群を抜く冷酷な戦士を頼っていた面があった。
いわゆる奥の手というやつだ。
しかしその奥の手が戦闘不能となれば次に力のあるシュナに、今以上の負担がかかるだろう。
だが、シュナは総司令という立場だ。
十分に動くことは出来ない。
ロムはシュナの分まで自分が動こうと意志を固めた。
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