†動き出す世界†

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………ま ……に………ま! 「だれだ…おれを呼ぶのは」 おにい…ま! 「この声には聞き覚えがある…」 カイは気だるい目をうっすらと開く。 もう!おにいさまってば!! 「シ、シルビィ!?」 カイは勢いよく目を開いた。 「どこだ…ここ」 カイが目を開いた先には声の主の姿はなく、ただ深い闇が広がっていた。 「シルビィ!どこだ!!」 確かに聞こえた。 聞き間違えるはずはない。 カイは立ち上がり何も見えない闇に手を伸ばす。 しかしその手には何も触れない。 ……最愛の肉親の声でも聞こえたか? 戸惑っていたカイの耳に突如として地の底から響くような別の声が聞こえた。 「!」 カイはこの声にも聞き覚えがあった。 ……苦しいか? 「お前は誰だ!」 ……堕ちてしまえば楽になる 声の主はカイの問いかけには答える気はないらしい。 辺りは闇。 姿は見えない。 カイは眉間に皺を寄せる。 ……魔獣が憎いか? カイの表情が青ざめる。 ……どうした? 声の主が嘲笑うかのようにカイに問いかける。 「や、やめろ」 ……憎いか?? 声の主は畳み掛けるようにカイに囁く。 「やめろ!!」 カイはその場に崩れ落ちた。 「やめてくれ…」 …フハハハ!無様だな 「お、お願いだ…。やめてくれ…」 …もっとだ…もっと深く堕ちよ… 謎の声はカイを闇へ誘うかのよう暗く、低く囁く。 それは反響するように闇に響き、カイの思考を奪っていくのだった。
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