迷子の子猫

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でもそれはおとぎ話の中での話。 実際どうだかは彼らにしか分からない。 入ろうかどうか迷っていると「おい」と先日聞いた声が響いた。 「何故お前がここに居るんだ。部屋で大人しくしていろとアゼルに言われなかったか?」 「言われなかった。探検中に迷子」 「お前な……」 シキは気だるげに体を動かし、額に手をあてた。 どうやら呆れているようだ。 それを見て、リクも自分に呆れてみた。 「ほら、早く入って扉閉めろ。眩しいだろうが」 「うん」 リクは扉を閉め、シキの寝ているベッドへ歩み寄った。 なんだか彼は多少ぐったりしているように見える。 「来い」 「やだ」 「昼間から起きているんじゃねーよ」 「それが普通」 うん。 これは普通なんだ。 おかしいのは彼だ。 そう思ったが、吸血鬼にとっては昼間に動かないことが普通なのかなと思いなおす。 その間にシキが大きな欠伸をした。
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