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思わず目をつぶる。
次に目を開ければ、そこには青い花弁が大量に舞っていた。
そのどこか幻想的な世界の中に溶け込むように、白いコートを着た誰かが立っていた。
体のラインから女だとわかったが、フードをすっぽり被っていて、その顔は見えない。
唯一見えるのはフードの隙間から風になびく銀色の髪だけだ。
「お嬢さん」
また声がした。
今度は前から。
何者かはわからないが、近寄るのはよくない。
頭の中で警報が鳴っている。
その間にも、彼女は此方に向かって歩いて来る。
攻撃的な冷気が辺りを包みこんだ。
逃げなくちゃ。
そう思ったが足が動かない。
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