始まり

4/8
前へ
/82ページ
次へ
足だけじゃない、体全体がまるで縫い付けられたように動かない。 心の中で焦っている内に、とうとう女性はリクのすぐ前まで来た。 そして手を伸ばして、とんっとリクの額を軽く押した。 突如襲った脱力感。 体が崩れ落ちるのがわかった。 ビュオッと耳に空気が流れる音が届く。 もうすぐ地面だ。 そう思った時、その直前で女性に支えられる。 触れられた部分から、ドレスが凍りついた。 それに気付かぬうちにゆっくり地面に下ろされる。 ありがとう、と言おうとしたが口も動かない。 「ごめんなさい」 悲しいのか、辛いのか、震えたその声を聞いて悟った。 体がいうことがきかないのは、彼女のせいだと。 何故。 そう聞く事も出来ないまま、リクの意識は途絶えた。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

670人が本棚に入れています
本棚に追加