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「嘘だろ?」
用事が終わり、帰って来た時にはもう遅かった。
不自然に散った大量の青い薔薇の花弁の上で、ピクリとも動かない体。
その冷たさに驚き半分、悲しみ半分。
脈はある。
呼吸もしている。
それなのに、どうして目を覚まさない。
何時か話してくれたおとぎ話のように、キスで目覚めてくれればいいのに。
そう思って渇いた唇に口付けた。
氷のように、冷たい。
「シキ、もう寝た方がいい」
「嫌だ」
「子供じゃないんだから我儘言わない。ベッド広いんだから隣で一緒に寝られるでしょ?」
ノックもなしに部屋に入って来たのはアゼル。
彼の手には毛布があった。
渋々それを受け取り、リクの隣に潜り込む。
すると突然襲ってきた睡魔。
どうやら自分が思った以上に疲れていたらしい。
そのまま意識が沈むのをシキは拒むことはできなかった。
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