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「お前は生贄だろう?」
「そうみたい」
「嫌じゃないのか?」
「別に」
自分は独りだった。
この血の色をした髪を気にして、極力誰とも関わらないようにしていた。
だから迷いなく選ばれたのだろう。
そうでなくても小さな町だ。
娘の人数なんて限られていた。
女に産まれたことが不運だったのだ。
「僕は、死ぬの?」
「いや、殺しはしないが……」
血は分けてもらうと困ったような表情で言った赤い目の彼に、リクは首を傾げた。
食料を求めたのは彼だ。
その生贄相手に何を困ることがあるのだろう。
「俺はシキ。こいつはアゼル。何かあったら呼べ」
シキと名乗った青年は、黒いロングコートを翻して部屋から出ていった。
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