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「なありん」
「はい」
「お前、あいつが怖くねえのか?」
りんは「?」と首を傾げる。
「ううん。りんは殺生丸様のこと、一度も怖いなんて思ったことは無いよ」
そして思い出す。
初めて出会ったときのことを。
どうして何も食べないんだろう。
最初はどんな食べ物を持っていけばいいか分からないから、とりあえず人間の食べ物を木の葉に乗せて持っていったんだ。
『人間の食べ物など、口に合わぬ』
そう言われたから、次はヤモリとか…人間があまり口にしない生き物をそのまま持っていってみた。
それでも『いらぬ』って追い返されちゃったけどね。
どうして何も食べないんだろう。
それでも毎日、水も一緒に届けたりしたよ。いつでも食べれるように、食料も置いた。
お腹が空いたら、いつでも食べれるようにしておくことしか、りんには思いつかなかったから。
『顔をどうした?』
顔を怪我していたりんに、自分からかけてくれた言葉。
あの時は本当に嬉しかった。
「お前と出会ってからのあいつは変わった」
頭上から降ってくる声に、りんは現実に引き戻された。
「前のあいつは・・・自分の道を塞ぐ物、全てを殺すような目をしていた。義兄弟の俺にでもその爪を閃かせていたんだ」
初めて会ったかごめに対しても、容赦なかった。
「でも、今は違う。
・・・お前と会ってからのあいつは、何と言うか・・・その・・・」
言葉を濁す犬夜叉に、誰かが抱きついた。
「おぅわぁっ!?」
反射的に鉄砕牙を握る。
「何話してるの~?」
間延びした声に、ぱっと振り向いた。
「…かご…め」
早鐘を打つ心臓を押さえながら、鉄砕牙から手を離す。
「殺生丸様のこと、話してたんです」
「殺生丸の?」
「りんが殺生丸様と初めて出会った日のことを話していたら、犬夜叉様が言ったんです。
『お前と出会ってからのアイツは変わったな』って」
そうね、とかごめも犬夜叉から離れてうなずいた。無防備の自分に容赦なく毒を浴びさせてくれたのだから。
「殺生丸の優しさはね、りんちゃんにしか分からないわ」
「何でですか?」
「りんちゃんが大事だからじゃない?」
犬夜叉が口にしたら殺生丸に殺されそうなセリフを、かごめはすらすらと口にした。
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