待ち続けること

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そして、約束の日。 「りん、返事を聞きに来たぞ」 珊瑚さまから受け取った着物を来て、殺生丸様に駆け寄った。 「私と共に来るか、それともこの村で一生を過ごすのか」 「一生この村で生きるのは、りんには無理です」 きっぱり言うと「ではどうする?」と声が降ってくる。 だいじょうぶ。 ちゃんと伝えれば、殺生丸さもわかってくれるよね。 ついにこの時が来た。 『もしりんちゃんがあんたを選ばなかったら、どうするの?』 『あんたはそれでいいの?』 それは私が最も聞きたくない言葉だった。 「あ、あのね…殺生丸さま」 昔のように、私と旅をすることを選んで欲しい。 「りんが…大人になるまで待ってくれる?」 それは予想外の言葉だった。 「本当は今すぐにでも、殺生丸さまとまた旅をしたい。  …でもりんはまだ子どもだから、きっとじゃまになっちゃう」 「りん。私はお前のことを邪魔だと思ったことはない。  でなければ、こうして迎えに来るはずがない」 私はその場に膝をついて、目線の高さを合わせる。 「でも、またあしてまといになるのはイヤです」 りんの瞳から涙が零れた。 「りんは今でも殺生丸さまが好きです。殺生丸様はどうですか?」 「ああ…私もだ」 りん、私はお前を泣かせるために来たのではない。 私はただ、お前の喜ぶ顔が見たかっただけなのに。 「待ってて…くれますか?」 片手でその体を抱き締めると、りんはさらに泣いた。 「昔は、私がお前をよく待たせていたな」 「…はい」 「だから今度は、私がお前を待とう」
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