りんの為なら…

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①今度来る時は… いつものように、新しい着物を届けに来た。 「…殺生丸さまあ!」 胸の中に飛び込んでくるりんを抱き締めたまま、着物を差し出す。 「…これ、殺生丸さまが選んだんですか?」 「いや、選んだのは琥珀だ」 いつもなら邪見に押し付けるのだが、別の用事で自分の傍にいなかった。だから琥珀を呼びつけた。 『これでどうでしょう?』 『ちゃんと新品を選んだか』 『はい』 「じゃあ、今度は殺生丸さまが選んでくださいね!」 「承知した」 着物を受け取ったりんは、嬉しそうにそれを抱き締める。 「あ、でも…」 突然その笑顔が曇る。 どうした、と訊く前に自分を見上げたりん。 「これ以上ふえると、置く場所がなくなっちゃうかな…」 楓さまに悪いな、という呟きを耳にするなり、ひとつの案を思いついた。 「りん、今も楓さまの家に住んでいるから…」 そんな二人を遠くから眺める人物。 「おや、また人里に下りてきたのですね」 「人を熊みてえに言うな」 小声で交わされる会話も、殺生丸はちゃんと聞いていた。 「わかった」と殺生丸が立ち上がる。 「わかった、って…」 「何がだ?」 「次は蔵だな」 りん達はその言葉を理解するのに、五秒を費やした。 「殺生丸さま?…あの、それはもしかして…」 「次に来る時は、要らぬ心配をしなくていい」 ((建てる気だ!!)) 何で、などと訊いてはいけない。 「…本当に、りんにぞっこんですね…」 「アイツなら、蔵のひとつやふたつ、楽々と建てそうだな」 りんは呆然と、立ち去る殺生丸の背中を見つめていた。
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