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以前にも聞いたことがある、ひとつの言葉。
『寺へ戻れ、りん』
どんなに自分を慕っていても、りんは人間。自分は妖怪だ。
人は人の世界で。
妖は妖の世界で暮らすのが最善だと考えていた。
どんなにりんが私と共に生きたいと願っていても、それは無理だと自分に言い聞かせてきた。
りんを人の世に戻そうと動く躯(カラダ)。
りんと共に生涯を過ごしたいと願う心。
殺生丸の躯と心は、全く違う方向へと動いていた。こんなことを長期間続けていたら、いつか自分が倒れてしまう。
『りんを頼む』
ある寺の坊主にりんを預けた後、悲鳴を上げる心を抑えるのに必死だった。
手放したくないと叫ぶ心。
ようやく落ち着いて来た頃、りんは私の後を追ってきた。
『殺生丸様!』
その姿を見た途端、再び私の心が歓喜に震える。
だが、口から出た言葉は『寺に戻れ』だった。
何故だ、りん。
何故、私を追ってきた。
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