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異変を感じるようになってから、数ヶ月が経った。
「…まだ食べるのか、りん」
邪見は先ほどから口を動かしている少女を見た。主は今、ここにはいない。
「邪見さまも食べる?」
差し出されたのは瓜だった。
首を振ると、あっという間に細い体の中に消える。
まるでブラックホールのようだった。
「もう良いのではないか?」
「そうだね。食べすぎは良くないし」
ようやく食事の手を止め、主の帰りを待つことにする。
ついこの間まで、りんはずっと臥せっていた。
何をするのもだるくて、一日中眠っていたような気がする。
食事もろくに摂っていなかった。
(夏が終わった途端、これじゃ)
臥せっていたのが嘘のように、こうして食べ続けている。
(ワシの心配は何だったんじゃろう…)
ため息をつくと、誰かがこちらへ向かってくるのが見えた。
「あれ、りんちゃん?」
聞き覚えのある声に、りんは振り返った。
「やっぱり、何かあると思ったのよねえ」
りんはパッと顔を輝かせ、かごめに飛びつく。
「お久しぶりです、かごめ様!」
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