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しかし。 『なに言ってんだよ。俺たちが決勝で当たるクラスだぞ?見とかないとダメだろ』 『僕は純粋に見てみたいなぁ』 『おれも行きたい。か、…かか会長のバスケしてるの見たい!』 上から翔、翡翠、伊織の順だ。 翔の言い分は、もっともだと思う。 でも!「決勝で当たる」って……。まだ1回戦だぞ?ちょっと気が早いんじゃなかろうか。俺たちが決勝へ行くかどうかなんてわからないし、会長のクラスもまた然りだ。 翡翠と伊織は……んー、いいんじゃない?見たいんだったら、見に行けば。 まあ俺を連れていく必要はまったくないわけだけど。 けど結局俺が今体育館にいるということは、俺の言い分が通らなかったというわけで。 「相変わらず……っつーか、さっきよりもすっげー人だな……」 「…そうですね」 当たり前というかなんというか。体育館内は既に人で溢れかえっていた。人口密度が高いことによって、空気が熱気を孕んで、むっとしている。 みんながみんな、会長と副会長の試合を見に来たのだろうということは、容易に推測できる。 会長たちのクラスと当たったクラスは可哀想だな。完全なアウェー戦。 もし会長たちに勝ってしまったとしたら、親衛隊に叩かれるんじゃないか?どうなるかは実際に試合が終わってみないとわからないことだけど。 「下では見れそうにないよ?」 「だな。上行くか」 翔と翡翠はどこで試合を見ようかと話し合っている様子。しかも歩きながら。このクソ人が多い中で。 対して俺は此処にいるのが嫌だというのを表情にありありと出して、体育館の入り口付近で立ち止まっている。 そして伊織は、はじめは翔たちのあとについていこうとしていたが、俺が動かないのに気付いて、こちらを窺っている。その表情は「どうしたの?」とでも聞きたそうだ。 「成瀬くん?」 険しい表情で体育館の中に視線を向けている俺と、遠ざかっていく二つの背中を交互に見ている大きな目。 .
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