330人が本棚に入れています
本棚に追加
爽やかな風が吹く。
満開の桜の木が揺れ、花びらが舞う。
新入生の因幡沙希斗(イナバサキト)は新しく始まる新生活に胸を躍らせていた。
因幡(これからこの学校でたくさん楽しい思い出を作るんだ!楽しみだなぁ)
まさにドラマの入学式とかにありがちなベタなワンシーンである。
しかしそんなのは気にしないのである。
先程ちょうど入学式が済んだところだ。
入学式では校長がいきなりステージで桜坂を歌いだし、新入生をドン引きさせた。
それで因幡のテンションも多少下がったが今はもう大丈夫である。
そして因幡はグラウンドに向かっていた。
部活動見学の為だ。
因幡は中学時代から野球をやっている。
最初はテレビで見たプロ野球の試合がきっかけだった。
プロ野球界のエースピッチャー榊原吉雄の完全試合に因幡は心を奪われたのだ。
ということで因幡はピッチャーをやっている。
「おーい因幡!」
後ろから自分を呼ぶ声がする。
田口だ。
田口は小学校からの友達で、キャッチャー。
小、中学時代に因幡の女房役を務めていた。
田口「野球部見に行くんだろ?一緒に行こうぜ!」
因幡「おう!」
グラウンドの片隅に数人の制服姿の男子たちがいた。
野球部に入るつもりなのだろう。
ここ、因幡達が入学した光谷高校はかなり新しい。
そのため野球部は今年から新設されるのだ。
因幡はそれでこの高校を選んでいた。
因幡と田口がグラウンドの片隅にきた時にちょうど監督らしき男がやって来た。
歳はかなり若そうだ。そこにいた全員が監督らしき男をまじまじと見つめている。
「君達は野球部入部希望者かな?」
監督らしき男はあごを撫でながら言った。
最初のコメントを投稿しよう!